「迷わない」認証体験を目指して――現場の声から生まれた、医療機関・薬局向け顔認証付きカードリーダー「Caora 2」

マイナンバーカードによるオンライン資格確認が医療機関や薬局に広がる中、顔認証付きカードリーダーには、利用者(患者さん)が迷わず使えることはもちろん、受付業務を円滑に進められることや、導入・運用の負担を抑えられることが求められています。
PFUが開発しリコージャパン株式会社が販売する、医療機関・薬局向け顔認証付きカードリーダー「Caora 2」(以降「Caora 2」)は、マイナンバーカードに加え、スマートフォンでの読み取りにも対応した顔認証付きカードリーダーです。7インチの大型ディスプレイ、音声案内、カードを置きやすい形状、スマートフォンがかざしやすい広い読み取りエリアなど、利用者の迷いを減らすための工夫を随所に取り入れています。
また、医療機関・薬局の職員の皆様や、導入・設置を担う事業者の皆様にとっても扱いやすい製品を目指しました。「Caora 2」の企画、ハードウェア・ソフトウェア開発、製造・品質、販売推進に携わったメンバーに、開発の背景とこだわりを聞きました。

お話を伺ったのは、

  • ハードウェア開発を担当した、
    ドキュメントイメージング事業本部 Caoraビジネス統括部 製品開発部 装置開発課の白藤さん、中村さん
  • ソフトウェア開発(PC側)を担当した、
    同 製品開発部 APP開発課の奥山さん
  • 拡販推進・商品化活動、パートナー企業支援を担当した、
    同 販推・サポート部の石幡さん
  • PFUテクノワイズ株式会社での製造、品質管理を担当した、
    装置製造部 スキャナー製造課 OWLチームの長谷さん

左から白藤さん、中村さん

左から奥山さん、石幡さん、長谷さん

現場の「困った」から考えた、迷わない受付のかたち

――「Caora 2」の企画・開発では、どのようなことを重視したのでしょうか。

石幡 販売推進の立場では、現行Caoraや自治体向けCaoraの紹介を通じて寄せられた声を、開発部門へ届けてきました。展示会や商談の場では、「カードを入れにくい」「受付カウンターに置きやすい、よりスリムな端末にしてほしい」といったご意見をいただくことがありました。
医療機関だけでなく、自治体の窓口でも、限られたカウンターのスペースに機器を設置するケースは少なくありません。また、カードを挿入する際に利用者が操作に迷ってしまうと、職員の方が対応する必要があり、本来の対応業務が一時的に止まってしまうこともあります。利用者や職員の皆様が困る場面を減らすことが、「Caora 2」の重要なテーマでした。

白藤 カードの置き方が分かりにくいという課題に対しては、マイナンバーカードを横向きに置き、奥まで入れる操作が自然に分かる形状を検討しました。「ここに、この向きで置く」ということが、初めて使う方にも直感的に伝わるデザインを目指しています。

石幡 また、マイナンバーカードに付属する透明フィルムを付けたまま読み取ろうとするケースもあります。「Caora 2」では、画面上のアニメーションでフィルムを外す案内を追加しました。カード挿入口についても、フィルムを付けた状態だと入れにくいサイズに設計しており、違和感に気付きやすいよう細かな工夫を加えています。

中村 ディスプレイは、従来の5インチから7インチへ大型化しました。サイズを大きくするだけでなく、明るさや見え方、ガラス部分の色味まで細かく確認し、使いやすさを細部まで検討しています。
さらに、現行Caoraでは外付けで対応していた覗き見防止フィルムを、「Caora 2」ではディスプレイ本体に内蔵しました。導入後すぐに安心してお使いいただける仕様としています。

――「Caora 2」の画面設計では、さまざまな利用者を想定した工夫もあったそうですね。

奥山 画面の操作フローや表示内容には要件上の制約があります。さらに、オンライン資格確認では、表示する情報量や画面遷移が増えてきています。今後も長く使っていただくことを考え、文字の大きさやボタンのサイズ、カラーパターン、画面の表示時間などを検討し、できるだけ迷わず操作できるようにしました。

特に印象に残っているのは、さまざまな利用者を想定したアクセシビリティに関しての気付きです。例えば、操作案内の動画を繰り返し再生し続けると、動画に意識が向きすぎて次の操作に移りにくくなる方がいることを学びました。そこで、動画は一定時間で止まるように見直しました。

また、視野狭窄の方に実際に操作していただいた際、ATMなどで画面を確認したり、数字を探したりするのに時間がかかり時間切れになることがある、というお声をいただきました。こうした利用者にも安心して操作いただけるよう、十分な操作時間を確保しています。開発者だけでは気付きにくい視点を取り入れられたことは、大きな学びでした。

スマートフォン対応と運用のしやすさ。要件の先にある使いやすさへ

――「Caora 2」では、スマートフォンでの読み取りにも対応しました。どのような工夫をしたのでしょうか。

石幡 スマートフォンの読み取りは、次期顔認証付きカードリーダーに求められる機能の一つです。「Caora 2」では、スマートフォンをかざす読み取りエリアを広く確保しています。

スマートフォンに搭載されているNFCアンテナの位置は、機種によって異なります。利用者が「自分のスマートフォンのどこにアンテナがあるのか」を意識していることは、ほとんどないと思います。顔認証付きカードリーダー側の読み取りエリアが狭いと、少しでもかざす位置がずれただけで読み取れず、利用者が戸惑ったり、職員の方が対応したりする場面につながります。
「Caora 2」では、読み取りエリアを広くすることで、細かな位置を意識せずにスマートフォンをかざしても、読み取りやすい設計にしています。

中村 マイナンバーカード用とスマートフォン用、それぞれの操作位置を案内するため、誘導用LEDライトも搭載しました。単に点滅させるのではなく、明るさが滑らかに変化するように制御し、やわらかく案内する表現にしています。

また、現行Caoraはブザーによる通知のみでしたが、「Caora 2」ではスピーカーを新たに搭載し、音声案内に対応しました。聞き取りやすさや耐久性を確認するため、複数メーカーのサンプルを比較し、開発メンバー、販売推進メンバーにも聞いてもらいながらスピーカーの選定を進めました。

奥山 ソフトウェア側では、音声案内、効果音、LEDライト、カードリーダーを、利用状況に応じて適切に制御する必要がありました。

「Caora 2」には、マイナンバーカード用とスマートフォン用のリーダーが搭載されています。例えば、マイナンバーカードを読み取る場面ではカード用のリーダーとLEDライトを有効にし、スマートフォンを読み取る場面ではスマートフォン用に切り替えます。音声ガイダンスと、カードの取り忘れを知らせるブザーが重ならないようにすることも重要でした。
利用者が意識しなくても自然に操作できるよう、裏側では複数の機能を細かく連携させています。

――導入・運用面では、どのようなことを工夫しましたか。

奥山 現行Caoraをお使いのお客様が、「Caora 2」への移行時に迷わないことを大切にしました。既存の管理ツールや操作の流れを大きく変えるのではなく、基本的な使い方は維持した上で、便利な機能を追加しています。

例えば、「Caora 2」では資格確認端末のPC側の管理アプリから、本体の画面輝度や音量を変更できるようにしました。従来はCaora本体の設定画面で行う必要がありましたが、日常的な管理作業をPC側でも進められるようになりました。

また、現行Caoraと「Caora 2」を同じ管理ツールで設定・管理でき、混在して使用することも可能です。PCを継続利用する場合は、既存の管理アプリを活用できるため、入れ替え作業の負担を抑えることができます。

石幡 当初は、Caoraの入れ替えに合わせて資格確認端末のPCも入れ替えるケースが多いと考えていました。しかし、実際にご紹介を進める中で、PCを継続して利用する医療機関・薬局も一定数あることが分かりました。
PCを継続利用する場合、管理アプリをそのまま活用できることは、大きなメリットになります。導入・設置事業者の皆様からも、設定や入れ替えが進めやすくて良いという評価をいただいています。

開発・販推が一体となって磨いた「Caora 2」のデザインと機能

――「Caora 2」は、どのような体制で開発を進めたのでしょうか。

中村 現行Caoraの改善だけでなく、営業やサポートの担当者が現地で聞いたお客様の声を、できる限り製品に反映することを重視しました。開発、販売推進の全員で毎週打ち合わせを行い、要望や課題を共有しながら開発を進めています。
開発部門では、技術的な課題だけを見るのではなく、「実際に使う方にとって分かりやすいか」「設置や運用を担う方にとって扱いやすいか」という視点を大切にしてきました。

白藤 筐体デザインの検討では、社内にある3Dプリンターを積極的に活用しました。試作品をその日のうちに出力し、実物を確認しながら議論と設計へのフィードバックを繰り返しました。
また、開発メンバーだけで判断するのではなく、営業や販売推進など、開発に直接携わっていないメンバーにも試作機を操作してもらいました。つくる側は、技術的・製造的な制約に目が向きがちです。異なる立場のメンバーからの多角的な視点を取り入れながら、使いやすさを磨き上げていきました。

さらに、販売推進メンバーから共有された現場の声で、医療機関の中には、毎日の開院前に顔認証付きカードリーダーをカウンターへ出し、閉院後に片付ける運用をされている施設があると知りました。そこで「Caora 2」では、背面に持ち手を設け、底面には手をかけやすいくぼみを設けました。日々の運用を想定した小さな工夫も、現場の負担を減らすために大切だと考えています。

背面の持ち手と底面のくぼみにより、さらに設置・片付けを楽に

高品質を安定して届けるために、製造現場に込めた工夫

「Caora 2」の使いやすさや品質は、開発段階だけで完成するものではありません。医療機関や薬局で安心して使い続けていただくためには、量産段階でも一台一台を安定した品質で製造することが欠かせません。
製造・品質管理を担当するPFUテクノワイズの長谷さんに、量産立ち上げと品質を支える仕組みについて聞きました。

――製造立ち上げにおいて、どのような点を重視しましたか。

長谷 製造では、品質・コスト・納期・安全を常に意識しながら、効率よく生産できる体制を整えています。「Caora 2」は、組み立て工程は短時間で進める必要がある一方、機能試験には一定の時間がかかります。そのため、試験を並行して実施できるよう工程を整え、生産性と品質を両立できる体制をつくりました。

また、開発試作の段階から、組み立てにくい箇所や品質リスクがある箇所を製造側から開発部門へフィードバックしています。例えば、誤った向きでも部品を取り付けられてしまう構造の場合、量産時の作業ミスにつながる可能性があります。そこで、正しい向きでなければ取り付けられない構造にするなど、設計段階で対策を講じます。量産が始まってから対応するのではなく、早い段階でリスクを解消することが、安定した品質につながります。

――製品の品質を守るために、どのような仕組みを取り入れていますか。

長谷 品質を守るためには、人の確認だけに頼らず、不良を出しにくくする仕組みをつくることが重要です。例えば、ネジ締めでは規定のトルクで正しく締結されるよう、MES(Manufacturing Execution System)2.0 組立支援システム(注1)を使用しています。必要な工程を完了しなければ次に進めない仕組みで、作業履歴も記録されるため、作業漏れや誤作業の防止につながります。
注1:MES2.0 組立支援システムは、「驚きがあって、楽しさがある、PFUのものづくり~最新のシステムと作業者の工夫で現場を変える~」(https://journal.pfu.ricoh.com/00058/)でも紹介しています。

――今後、製造・品質の面で取り組みたいことを教えてください。

長谷 目指しているのは、誰が作業しても同じ品質の製品をつくれる製造体制です。現在も、MESには工程ごとの作業時間や履歴が蓄積されています。こうしたデータを分析し、時間がかかっている工程や改善すべき点を明らかにすることで、さらなる品質向上や生産性向上につなげていきたいと考えています。

また、作業者の経験や判断に依存する部分を減らすため、検査や判定の標準化・自動化も進めていきます。現場の課題を丁寧に捉え、開発部門や製造支援部門と連携しながら、より安定した製造体制をつくっていきたいと思います。

これからも、現場の声とともに進化する「Caora 2」

――今後、「Caora 2」を通じて、どのような価値を提供していきたいですか。

白藤 最も大切にしたい価値は、やはり「使いやすさ」です。製品をつくる側の視点だけではなく、実際に使う方や、設置・管理する方の立場に立ち、継続的な改善につなげていきたいと考えています。
リリース後も現場から寄せられる声に真摯に向き合い、次の製品改善につなげていくことで、より多くの方に安心して使っていただける製品へと磨き上げていきます。

中村 医療機関では、年齢やIT機器の利用経験を問わず、さまざまな方がカードリーダーを利用します。だからこそ、誰にとっても使いやすく、安心してお使いいただける装置を提供していきたいと考えています。

奥山 利用者にとって分かりやすいことはもちろんですが、医療機関・薬局の職員の皆様や、設置・運用を担う事業者の皆様にとっても、扱いやすい製品であり続けることが大切だと考えています。
トラブルが起こりにくいこと、万一発生しても復旧方法が分かりやすいこと、設置作業をできるだけ短時間で終えられることなど、こうした運用面の使いやすさをさらに高め、「買い替えるなら次もCaoraを選びたい」と思っていただける製品を目指していきます。

石幡 「Caora 2」には、これまでに得られた現場の声をできる限り反映しています。一方で、実際に使われ始めてから見えてくる課題もあるはずです。今後も現場から寄せられる声に丁寧に耳を傾け、改善につなげていきたいと考えています。

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