製品本体から梱包材までトータルで環境対応――開発者たちが語るScanSnap iX2500で実現した環境配慮設計

世界的に環境負荷への配慮やプラスチック資源の循環利用が求められる中、リコーグループはマテリアリティ(重要社会課題)のひとつとして「循環型社会の実現」を掲げています。
PFUでは、その実現に向けた環境目標として新規資源使用量の削減を設定し、スキャナー開発において「再生プラスチックの活用」と「梱包材における化石資源由来バージンプラスチック注1の使用削減」に取り組んでいます。
本記事では、2025年6月に発売されたScanSnap iX2500の開発エピソードをもとに、材料・設計の変更や品質維持との両立など、環境負荷を減らすための「環境配慮設計」の挑戦をご紹介します。
注1:石油や天然ガスを原料として、新しく作られた未使用のプラスチックのこと。

お話を伺ったのは、

  • 環境配慮設計全体を企画・推進した、
    ドキュメントイメージング事業本部 スキャナー開発統括部 開発推進部 ハード開発推進課の本江さん、窪城さん、高山さん
  • 環境配慮材の先行調査や評価を担当した、
    同 HW先進技術開発部 先行技術開発課の山田さん
  • 製品本体の設計、および梱包材の素材変更を担当した、
    同 SS-HW開発部 機構開発課の砺波さん、塩村さん、同 SS-HW開発部 回路開発課の山崎さん

左から窪城さん、高山さん、本江さん

左から塩村さん、山崎さん、砺波さん、山田さん

環境配慮設計のきっかけと、手探りでのスタート

――この取り組みを始めたきっかけは何でしょうか?
本江 ScanSnap iX2500の開発を始めるタイミングで、この取り組みもスタートしました。
環境配慮の重要性については、PFU全社の環境目標の新たな設定もありましたが、それ以前から世界的な環境規制やカーボンニュートラル(注2)の流れで意識を持っていました。特に欧州では規制だけでなくユーザーによる環境意識が高く、「エコをうたっていない製品」の場合、ネガティブな印象を持たれる可能性があります。 「リコーグループとして、スキャナー製品でも環境配慮に対応する必要がある」と考えていたところに、ScanSnap iX2500の開発とタイミングが重なりました。
注2:温室効果ガスの排出量と、森林による吸収量や技術による除去量を相殺し、実質的に排出量をゼロにする状態。地球温暖化対策として、日本を含む多くの国が2050年までの実現を目標に掲げ、再生可能エネルギーの導入、省エネ、技術開発、森林保全といった多角的な取り組みを進めています。

ハード開発推進課の本江さん

――活動開始時はどんな点に苦労しましたか?
本江 梱包材のプラスチック材の変更については、選択肢が定まっていない中で、山田さんが先行調査として多様な素材を評価してくれました。

山田 通常のプラスチックに加えて、土に溶けるプラスチック、海に溶けるプラスチック、部分的に環境配慮材を使ったプラスチックなどを幅広く調べましたが、何を採用すべきかの明確な答えや目標がない状態でした。そこからの取捨選択が難しかったですね。
最終的には、リコーグループとして「化石資源由来バージンプラスチックを減らす」という目標があったことから、梱包材には「化石資源由来でない・かつバージンプラスチックでないもの」を採用する方向で定めました。

先行技術開発課の山田さん

――再生プラスチックの利用については、どのように推進しましたか?
窪城 再生プラスチックについての業界動向を把握して、米国EPEAT(注3)などの基準値や他社の取り組み事例を参照しつつ、自分たちの目標を設定しました。
注3:EPEAT(Electronic Product Environmental Assessment Tool)。米国政府系機関を中心にグリーン購入促進制度で採用されている電子製品環境評価システムのこと。

高山 既存機種の数値データを集め、現実的に到達可能な目標値を検討したり、環境ラベルの規制内容や競合他社の値を調査したりして、「本体樹脂総重量の25%(重量比)に再生プラスチックを使用」という目標値を決めました。

ハード開発推進課の窪城さん、高山さん

――調査や目標設定の他に、何か準備はしていましたか?
砺波 ScanSnap iX2500の開発が本格的に動き出す10か月ほど前から、スキャナー開発ではリコーとの連携をスタートしていました。その中で、PFU側のノウハウが少なかった緩衝材やパルプモールドについて、月1回程度のペースで情報交換・連携会議をさせてもらい、ノウハウを蓄積していきました。そのタイミングでScanSnap iX2500の開発が決まり、事前の連携・準備のおかげで、製品開発に間に合わせつつスピード感を持って進められました。

耐久性と環境配慮を両立するための、再生プラスチック選定と設計

――再生プラスチックはどのように選定しましたか?
砺波 素材メーカーが公開している物性データを参考に、これまで使用していない再生プラスチック材を評価しました。ところが、実際に評価してみると、データから想定していたイメージと違う点も多くありました。 その点は、PFU開発陣の設計で形状などを工夫しながら、量産仕様に合わせていきました。
また、素材メーカーの全面協力のおかげで短期間に多くのサンプルを集めることができ、私たちも迅速に評価・決定を行えました。なお、耐久性や強度を確保するために、用紙搬送路や強度を受ける部位などには、様々な紙やプラスチックカードで搬送試験をしっかりと実施し、選定しました。

――設計の中で工夫した点はどんなところですか?
砺波 再生プラスチックの使用比率を上げるために、ScanSnap iX2500では、部品の設計を工夫してプラスチック全体の重量を減らしつつ、再生プラスチック材を使う部位・量を増やすという方法を採りました。スキャナー全体としては、サイズアップなどの影響で以前のモデルよりも約100g重くなっていますが、その中でもプラスチックの量を抑えつつ使用比率を上げる技術的工夫をしています。その結果、再生プラスチックの含有率(注4)を25%に引き上げることができました。
注4:再生プラスチックの含有率は調達の状況によって変動する可能性があります。

機構開発課の砺波さん

品質も見た目も妥協しない“脱バージンプラスチック”

――ScanSnap iX2500以前の梱包材には、緩衝材の発泡スチロールや、スキャナー本体とケーブル類を包装するバージンプラスチック材の袋、ケーブル類の結束にプラスチックのビニタイ(注5)を使用していました。それぞれ、どのような素材に変更したのでしょうか。
注5:樹脂(ビニールなど)で覆われた中心にワイヤー(針金)が入った結束材のこと。

山田 緩衝材は、段ボールを原料とするパルプモールド(注6)に置き換えました。
パルプモールドの採用に関しては、スキャナー本体とケーブル類などの添付品を決められた箱サイズに収める形状設計が難しく、外観品質との両立にも苦労しました。箱のサイズは、輸送効率をもとに決められており、その制約内に収めること自体が技術的なチャレンジでした。

さらに、パルプモールドは、通常、裏面を凸凹にしてクッション性を持たせますが、そのままだとパルプの粉が出てスキャナー内部に入るリスクがありますし、製品価格にふさわしい品位が損なわれる可能性もあります。そこで、裏側も平らになるよう工夫して、「環境配慮」と「製品にふさわしい見た目・品位」を両立しました。
注6:古紙や非木材パルプなどを主原料として製造される、紙製の立体成形品。卵パックや家電の緩衝材、食品容器など、環境に配慮したプラスチック代替素材として、幅広い用途で使用されています。

先行技術開発課の山田さん

塩村 本体や添付品を包むプラスチック袋は、再生プラスチック材に変更し、材料・厚み・重量を変えたいくつもの候補の中から、袋とパルプモールドの相性も踏まえて評価しました。品質上の問題がないかを徹底的に評価し、最適な組み合わせを選定しました。

再生プラスチック材を使った袋は、どうしても黄色っぽく色が混じり、細かい粒も見えるなど見た目の課題があります。その点は素材メーカーに依頼して色混じりをできるだけ軽減してもらい、量産で安定して出せる品質レベルに積み上げていきました。

機構開発課の塩村さん

山崎 ビニタイは、本来プラスチックがよく使われる部分を「ペーパークラフト材」に置き換え、緩衝材のパルプモールドと揃えることで、梱包全体を環境配慮型で統一しました。再生材を使ったビニタイなど、素材メーカーでもイメージしづらい材質については、メンバーが家庭にある実物を持ち寄って「こういうものです」と見せながら試作してもらいました。

また、ACケーブルの先端部分には、プラスチックのキャップを装着していたのですが、ケーブルメーカーと品質面を検証して問題ない旨の書面をもらったうえで、先端キャップを装着しない方法に変更しました。

回路開発課の山崎さん

山田 さらに、パネル部分を保護する包装材にも不織布(コットン)を採用しました。

先行技術開発課の山田さん

“製品+梱包”のトータルで、スキャナー業界の環境対応をリード

――環境配慮設計の成果として、再生プラスチックの含有率を25%に引き上げ、梱包材における化石資源由来バージンプラスチックの使用ゼロを達成しました。この取り組みで最も大変だったことは何でしょうか?
山田 私たちが求める環境配慮素材・環境商材を揃えるところに苦労しました。
商社からも「PFUの環境配慮に対する姿勢はかなり先進的」と言われるほどで、自分たちでどんな環境配慮素材があるか情報を集め、数少ない他社製品の事例などを参考に調査した結果、この取り組みを機に私たちもかなり詳しくなりました。
最終的には、性能・外観・価格に見合う質感などを関係者とすり合わせながら、必要な素材に絞り込み、「ScanSnap iX2500にふさわしい環境配慮」を形にできたと思います。

本江 スキャナー業界全体では、緩衝材の一部に再生プラスチック材などを使っている企業はありますが、製品本体・梱包材・袋までをトータルで環境配慮した事例はまだ少ない状況です。
“製品+梱包全体で環境対応した”点でもPFUは先進的だと思っています。「スキャナーのトップベンダーとして、他社より先端の環境対応を進め、PFUがやることで他社もついてくるはず」という考えのもと、取り組んでいます。

開梱した状態のScanSnap iX2500

ScanSnap iX2500で環境対応を実現

――この取り組みにおける今後の目標や展望を教えてください。
本江 ScanSnapでは今後の機種でも目標値を下げず、カーボンニュートラルの2050年に向けて、PFUとしてできることを検討し続け、少しずつ目標値を引き上げていく必要があると考えています。

山田 開発部隊としては、白モデルのScanSnapで使える「白系の再生プラスチック材」を採用し、再生プラスチックの含有率50%を目指して挑戦したいと思っています。PFUが他社に先駆けて環境対応に取り組むことで、業界全体の環境対応が進み、取り組み事例が広がっていくことを目指しています。

インタビューに参加いただいたみなさん

PFUは、持続可能な社会の実現に向けて、スキャナーをはじめとする環境配慮型製品や環境配慮ソリューション・サービスを通して環境負荷低減に貢献していきます。
この記事で紹介した取り組みの他にも、ScanSnapおよびfiシリーズで行っている取り組みがあります。「サステナブルで高品質なPFUのスキャナー」でご確認ください。

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