スキャナーはここまで試される!PFU品質の“ウラの裏”を一挙公開

メーカーにとって、品質試験は必要不可欠な取り組みである。PFUのスキャナーはグローバルにビジネスを展開しており、海外のさまざまな環境で使用されることを想定して、多様な試験による自社製品の品質評価を実施している。

本記事では、これまでに公開した記事から試験内容をダイジェスト形式でお伝えする。気になった試験については、それぞれの記事や動画もぜひご覧いただきたい。

数か月にわたる連続スキャンで試される耐久性――信頼性評価

「製品をできるだけ長く、安心して使っていただくために」――ロボットと人の協働による地道な検証

スキャナーの「信頼性評価」では、紙を連続してスキャンし続ける「連続給紙テスト」を実施して、次の項目を確認する。

  • 原稿の読み取り回数に対する耐久性
  • 読み込んだ画像にスジ等が出ていないかといった品質
  • 給紙ローラー(紙をスキャナー内部に送り込むためのローラー)の限界点
  • 操作する人が直接触る部分(ボタンやスイッチ)の耐久性

評価には、産業用ロボットを使用している。試験担当者に代わってロボットが実施する一連の動作は、以下の通りである。

  1. A4サイズの未使用コピー用紙(1束:50枚)を棚からワシ掴みにし、スキャナーの原稿台にセットする。
    産業用ロボットがスキャナーの原稿台にコピー用紙をセットする様子
  2. ロボットの先端に付いている“指”が、スキャナーのタッチパネルの「スキャン」ボタンを押す。
    ロボットの先端に付いている指がスキャナーのタッチパネルを押す様子
  3. 50枚の読み取りが完了した後、スタッカーに排出された原稿を再び原稿台にセットし、「スキャン」ボタンを押す。

この動作を10回繰り返し、合計500枚の原稿をスキャンする。この1サイクルが終わると、ロボットは別の棚からコピー用紙を取り出し、またスキャンを開始するという動作を繰り返す。

PFUでは、設計仕様の2倍にも及ぶ回数(枚数)で入念な検証を実施している。この地道な検証こそが、PFU品質の確かさを生み出しているのである。

ロボットが原稿をセットし「スキャン」ボタンを押す様子の動画や、信頼性評価に要する検証期間、人ならではの評価観点についても、ぜひ記事でご覧いただきたい。

第1回 PFU品質のウラの裏を覗いてみた~どんな場所でも安心して使ってもらうための地道な検証~

専用空間と精密な測定で試される電波量――電波試験

「世界各国で安全に利用していただくために、規格で定められた基準をクリア」――長年の経験と実績から生まれる正確な測定

電波試験は、「EMC試験」とも呼ばれ、以下の2つで構成される。

  • EMI(Electromagnetic Interference)試験
    開発製品から出る電波量を測定し、他の機器に干渉しないこと、規格で定められたレベル以下であることを確認する試験
  • EMS(Electromagnetic Susceptibility)試験
    他の電子機器からの電波影響を受けても、正常に動作するか、誤作動を起こさないかを確認する試験

電波量を正確に測定するためには、外部からのラジオや携帯電話、無線、車の走行などによるノイズの影響を受けない、特殊な空間が必要となる。この環境を実現するのが「電波暗室(デンパアンシツ)」である。
PFUは石川本社の敷地内に電波暗室棟を有しており、その中に「10m法電波暗室」が設けられている。

10m法電波暗室の内部は、壁と天井が「電波吸収体」と呼ばれる突起物で囲まれている。電波吸収体は、電波を吸収し、電波の反射を排除するためのものだ。

10m法電波暗室の壁と天井の写真

電波吸収体で囲まれている「10m法電波暗室」の天井と壁

10m法電波暗室を備える「電波暗室棟」では、「ISO/IEC 17025」を満たした運営を行っており、国際試験所としての資格も取得している。PFUは、このような電波試験に代表されるEMC分野において、二十年以上にわたる豊富な経験と実績を有している。

電波量は、試験対象の製品を回転台に載せ、一定の速度で回転させながら測定する。試験では、製品から発生する電波量が規定値内で、規定違反していないということを確認する。各国で定められた規格をクリアするための試験が実施されている。

回転台にスキャナーが載っている写真

回転台にスキャナーを載せて、一定の速度で回転させる

回転台が動く様子を収めた試験の動画や、電波暗室の内部を360°体験できる映像も、ぜひ記事でご覧いただきたい。

第1回 PFU品質のウラの裏を覗いてみた~どんな場所でも安心して使ってもらうための地道な検証~

90cmからの落下で試される衝撃耐性――落下試験

「大切な製品を何度も落として、耐久性を検証」――規定よりもプラス10cmの高さで厳しくチェック

「落下試験」とは、製品を梱包箱に入れたまま落下させ、配送時に受ける衝撃に対する耐久性を確認する試験である。実際の配送時を想定し、さまざまな角度から梱包物を落下させることで、耐久性や製品への影響がないかを厳しくチェックしている。

落下試験は以下の手順で実施する。

  1. スキャナーが入った梱包物(ダンボール)を、落下試験機の専用テーブルに載せる。
  2. 操作パネル盤のDROPボタンを押し、梱包物を床に落下させる。
    落下試験機の専用テーブルから、梱包物を面で落下させる様子
  3. 再び梱包物をテーブルに戻し、異なる傾きで落下させる。この動作を、さまざまな面・辺(稜)・角で繰り返す。
    落下試験機の専用テーブルから、梱包物を辺(稜)で落下させる様子

テーブルの高さは90cmに設定されている。PFUでは、JISで規定されている高さよりも10cm高くし、より厳格なチェックを行っている。また、この高さは平均的な大人の腰の位置に相当し、荷物の積み替え中や、手で運搬中に誤って落下させてしまう状況を想定して設定されている。

落下の傾きについては、「1角3稜6面」という規定がある。これは、1か所の角、3か所の辺(稜)、6か所の面のそれぞれで試験し、それを1サイクルとするものである。PFUでは、この「1角3稜6面」のチェックを2サイクル行っている。お客様のもとに届くまでに万が一衝撃を受けた場合でも、製品が破損や故障のない状態で届けられるよう、厳しい試験を通じて細かくチェックしている。

90cmの高さから梱包箱が落下する動画や、繰り返される落下の衝撃によってできた「落下試験機」の鉄板のキズも、ぜひ記事でご覧いただきたい。

第2回 PFU品質のウラの裏を覗いてみた~配送時のあらゆる衝撃に耐えるための過酷な試験~

多量のほこりで試される読み取り性能――塵埃(じんあい)試験

「砂やほこりにまみれた環境でも、高品質のスキャンができるように」――さまざまな利用環境を想定した過酷な試験 Part.1

「塵埃(じんあい)試験」とは、人工的に作った試験用ダスト(砂やほこり)をスキャナーに一定時間、強制的に吹き付けて防塵性を評価する試験である。
自動車部品では一般的に行われている塵埃試験だが、スキャナーに対してこの試験を実施しているメーカーは稀である。また、PFUでは、電子情報技術産業協会(JEITA)が定める基準に基づき、事務所環境における50倍の量に相当するダストを用いた試験を実施している。

試験には、専用装置である「塵埃試験機」を使用する。塵埃試験の手順は以下の通りである。

  1. ダスト投入口から人工のほこりを塵埃試験機内に投入する。
  2. 試験対象のスキャナーに、連続読み取りができるようループ状に加工した原稿をセットする。
  3. スキャナーを塵埃試験機の中に入れる。
    塵埃試験機の中にスキャナーが入っている写真
  4. 塵埃試験機の扉を閉め、スタートボタンを押す。
  5. 4時間後、スキャナーを取り出し、付着したほこりを取り除いてからチェック項目を実施する。
    塵埃試験機から取り出したスキャナーで読み取りの評価を行う様子

チェック項目では、スキャナーに原稿を読み込ませて、画像に縦スジが入らないか、正常に動作するかなどを確認する。

スキャナーメーカーとしては珍しい塵埃試験を導入した背景や、塵埃試験機内のスキャナーにほこりが噴出する様子を収めた動画も、ぜひ記事でご覧いただきたい。

第3回 PFU品質のウラの裏を覗いてみた~ほこりにまみれた環境での利用を想定した検証~

低温環境・高温環境で試される読み取り性能――温湿度環境試験

「手がかじかむ0℃、汗が噴き出る40℃の空間で、長時間の地道な試験」――さまざまな利用環境を想定した過酷な試験 Part.2

「温湿度環境試験(以降、温度試験)」とは、温度や湿度の評価に特化した試験である。お客様の多様な利用環境を想定し、専用施設である「環境試験室」において、高温・低温・高湿・低湿の状況を作り出し、製品への影響を検証している。

環境試験室でスキャナーの温度試験を実施する場合、「低温+低湿度」の条件による低温試験と、「高温+高湿度」の条件による高温試験の2種類がある。設定条件は、低温試験が「温度0℃+湿度20%」、高温試験が「温度40℃+湿度80%」である。

低温試験の「温度0℃+湿度20%」が設定されている環境試験室のコントロールパネルの写真

低温試験の「温度0℃+湿度20%」が設定されている環境試験室のコントロールパネル

どちらの試験でも、複数種類の用紙を読み取り原稿に見立てて評価を行う。用紙の種類は、スキャナーの機能や特性に応じて異なる。たとえば、A4サイズの原稿だけでなく、パスポートのような冊子や身分証などのカードもスキャン可能な業務用スキャナー「RICOH fi-800R」の場合は、29種類もの用紙を使用して試験を実施する。
各種用紙をスキャナーにセットし、搬送状況および画像を確認する。この作業を、過酷な環境下で用紙の種類ごとに繰り返している。

低温試験の環境で防寒具に身を包み、スキャナーの読み取りを確認する様子

防寒具に身を包み、低温試験での読み取りを確認する様子

環境試験室の外観や、高温試験の「温度40℃+湿度80%」の環境下で汗と格闘しながら試験を行う様子も、ぜひ記事でご覧いただきたい。

第4回 PFU品質のウラの裏を覗いてみた~高温や低温環境での影響を徹底調査~

PFU品質を支える想い

品質試験においては、「お客様に安心してお使いいただける製品」を提供するため、製品を正確に評価し、定められた基準を確実にクリアしなければならない。

試験担当者は、日々大量の原稿をスキャンするユーザー、砂やほこりの多い環境で使うユーザー、低温・高温環境での利用など、さまざまなシーンを想定し、実際にその状況と同じ条件で検証を行っている。

さらに、試験を通じて得られた情報や知見は開発部門にもフィードバックされ、製品開発をバックアップしている。単なる評価にとどまらず、製品開発そのものを支える重要な役割を果たしているのである。

PFUでは、この「お客様第一」の想いとともに、製品と安心を同時にお届けするための品質試験を徹底している。

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