組込みコンピュータの「失敗しない」選び方

「組込みコンピュータを導入したいが、どういう点に気をつけて選べばよいのか分からない……」

「過去に組込みコンピュータを導入したが、生産時の対応やアフターサポートが悪くて大変な目に遭った……」

そんな悩みや失敗談を抱えている組込み機器の開発者も多いのではないだろうか。

産業用途で使われる組込みコンピュータは、オフィス環境で使われる前提のパソコンとは違い、過酷な環境への対応が求められる場合がある。周囲の温度が高かったり、振動や衝撃があったり、さらには連続使用時間が長かったりと、様々な環境下においても安定した稼働を続けなければならない。

このような品質を実現する組込みコンピュータに不可欠なものとは何か。

前回の『組込みコンピュータをイチからおさらい』に続き、組込みコンピュータの選定時に考慮すべきことやメーカー選定のポイントを紹介する。

※本記事に掲載の情報は、公開日時点のものです。なお、株式会社PFUは、2022年9月1日よりリコーグループとなりました。

組込みコンピュータ/メーカーを選ぶポイント

組込みコンピュータ/メーカーを選定する際に見落とせないことは何か。PFUで組込みコンピュータを取り扱う、インダストリープロダクト事業部の橋本事業部長代理に聞いた。

ハードウェアスペックが必要十分であること

[橋本]「まず見るべきは、処理性能です。

過剰なスペックでムダに高価な製品は避けたいところですが、反対に、必要なスペックを満たせなければどうしようもありません。そう考えると、必要かつ十分な、最適なスペックのハードウェアを選ぶこと、そのためにも、超低消費電力クラスからサーバクラスまで、広いレンジから選べることは、メーカー選定のひとつのポイントになるでしょう。」

使用環境に合わせてカスタマイズできること

[橋本]「押さえておきたいひとつのポイントが、CPUを搭載するプリント基板です。

24時間365日、高温あるいは振動や衝撃のある環境でも正常に動くように、冷却や耐衝撃性などを考慮した基板を設計する必要があります。そして、このような安定稼働に直結する製品自体の設計・製造品質はもとより、組込みコンピュータですから、お客様の装置に組み込むための実装スペースや、使用環境に適合する特殊仕様や堅牢性・耐環境性などへのカスタム対応力を持っていることが望まれます。

さらにはお客様の保有する様々な資産、例えばお客様の装置に必要不可欠で、自社で開発を行った拡張カードやソフトウェアなどですが、これらを新しい環境で継続的に活用したいという要求が当社にも多く寄せられています。装置全体の開発費用を左右しますので、このような要望があることは当然だと考えています。

ですので、選定するメーカーにはお客様からの様々な要求を解決できること、例えば電気設計、実装精密設計、BIOSやドライバを含め、ハードウェアとソフトウェア両方の技術的な提案力を持っていることが必要となってきます。」

長期にわたり安定して供給されること

パソコンの場合、半年から1年でモデルチェンジがあり、同一製品が何年も継続して流通することはない。搭載しているハードディスク製品ひとつとってみても、データ保存容量が増加した新たなものに変わっていく。

[橋本]「データを多く保存できるようになるのはよいことですが、組込みコンピュータでは、ディスクの仕様変更が頻繁に起きることは望ましくありません。ハードディスクの回転数が変わっただけでも、機械全体の性能に影響を与える可能性があります。再度の動作検証に加え、規格を取得し直すなど、大変な手間がかかることになります。」

組込みコンピュータは、一度導入を決めたら、何百台・何千台と調達するものだ。その過程で、使用する部品を頻繁に変えていくことは難しい。長期間にわたり、同じ品質の製品が安定して供給されることが重要だ。

また仮に、まったく同じ仕様での供給が難しくなった場合でも、コンピュータ全体の性能を落とさないためのノウハウや経験が豊富で、かつそういった改善を惜しまないメーカーを選びたいところだ。

災害時にも供給が止まらないこと

しかし実際に長く調達が続いたとして、地震や台風などの災害に見舞われることもあるだろう。そのような緊急時の供給はどうだろうか。

[橋本]「当社は、一昨年(2019年)、房総半島に台風19号が上陸して首都圏が大きな被害を受けたときも、昨年から現在にいたるコロナ禍に見舞われている最中においても、お客様や搭載部品を供給いただいているベンダーと密に連携し、できるだけお客様への 供給を継続する取組みを進めております。会社としてBCP(事業継続計画)に対応する 体制を準備し、お客様と共に災害・危機打開策に立ち向かうことを心掛けております。

メーカーがどんなBCP体制を敷いているかは、カタログスペックからでは分かりませんので、直接確認したほうがよいでしょう。」

緊急時における供給能力について、メーカーがどのようなBCP体制を敷いているのか、ここも押さえておきたい選定ポイントのひとつになりそうだ。

稼働後もサポートを受けられること

さらには、機器の稼働中にトラブルが起きたときの解析サポートも重要なポイントになるだろう。

[橋本]「例えば海外のメーカーだと、言語の壁、仕事の進め方、そして品質についての考え方なども違います。

言語や文化の違いで円滑なコミュニケーションができない、日本での“あたりまえ”がなかなか通じない、不具合があっても「部品の仕様です」で返されて終わり、ということでは困ります。サポートの丁寧さはやはり大きなポイントではないでしょうか。」

あらゆる要望をワンストップで実現できるメーカーを

ここまで解説したとおり、組込みコンピュータの安定した制御と、長時間の連続稼働を維持するには、様々な要件をクリアできる製品/メーカーを選ばなくてはならない。

もしも品質要件を満たさないものを選定し、結果として障害が多発することになった場合、どのような事態になるだろうか。

組込み機器の設計者は、その障害への対応や代替品調査に追われることになり、新製品開発の貴重な工数を奪われかねない。装置の製造ラインでは、受入検査に工数がかかり、直行率の低下で手戻り対応が増大する。さらには装置の導入先での修理費用、装置停止による操業補償といった思わぬ負担が生じることにもなる。

結果的にトータルコストが増大するだけでなく、信頼喪失で大切なお客様を失うことにもなりかねない。

組込みコンピュータは、一度導入を決めると、何年にもわたって多くの台数を調達するもの。モノとしての性能が優れていることはもちろん、壊れない、不良品がないという安定性や信頼性、さらには「何かあったときに頼りになる」手厚いアフターサポートも含め、トータルで安心できるメーカーを選びたいところだ。

組込みコンピュータでPFUが選ばれる理由

PFUは、コンピュータ黎明期から現在まで、60年にもおよぶ実績があるコンピュータメーカーだ。日本の産業支援を使命と考え、高品質なコンピュータ製品を開発、量産し続けているという。

[橋本]「当社は、富士通グループのなかで、1980年代からオフィスコンピュータやミニコンなどを手掛けてきた経験があります。」

[橋本]「1990年代のオープンアーキテクチャ時代には、UNIXベースのサーバやワークステーション開発を、2000年代には産業領域でIntelテクノロジとWindowsベースのコンピュータを開発してきました。その経験を活かして、現在、組込みコンピュータの開発を行っています。」

組込みコンピュータで20年を超える出荷実績を誇る国内メーカーとして、製品の品質に絶対的な自信を持っているという。多くの装置メーカーからPFUが選ばれている理由について、橋本は次のように語る。

豊富な製品ラインナップ & 最適なスペックを技術者に相談可能

[橋本]「当社はIntel社のCPUを使用した組込みコンピュータを得意とし、超低消費電力のモバイルクラスのIntel Atomから、高性能サーバクラスのXeonまでのフルレンジを揃えています。形状もボックス、ボードそしてモジュールタイプから選べます。」

またCPUを選ぶ際にも重要なポイントがあるという。

[橋本]「お客様の開発の困りごとを、当社の経験豊富な技術者に相談いただける点です。お客様のお話を聞いたうえで、必要とされている仕様にフィットする最適な製品をご提案できます。」

長期的な安定供給が可能

[橋本]「当社には、組込みコンピュータ製品に使用する部品の管理を専門に行う部門があり、部品のライフサイクルをチェックし、その部品の生産終了時期を予測したうえで、長期間使用できる部品(長寿命部品)を採用しています。

ですので、当社の組込みコンピュータを採用いただいた場合、同じ組込みコンピュータ製品を、お客様製品の量産が終了されるまで、安定して供給することができます。また、お客様のご要望に応じて必要な数量の部品もストックしており、長期的に安定した供給を実現しています。」

お客様の声「PFUのものは壊れませんね」
~高品質要件を満たして自社開発部品を量産可能~

富士通グループのなかで長くコンピュータ開発を続けてきたPFUでは、プリント基板を自社で開発しているという。産業領域のコンピュータの品質要件は非常に高く、それを量産できることもメーカーとして選ばれる条件であろう。

[橋本]「お客様から「PFUのものは壊れませんね」と、よくお誉めの言葉をいただきます。

産業領域の品質要件を十分に考慮して設計し、社内の評価基準をクリアしたものを量産していますので、安心してお使いいただくことができます。」

お困りごとを解決する、ハードウェア/ソフトウェア技術力

[橋本]「当社には、コンピュータに使用する主要な部品(CPU、FPGA、OS、HDD/SSDなど)の活用技術について、長年の経験で蓄積してきたノウハウがあります。

また、プリント基板以外にも、ソフトウェア(ドライバ、BIOS、ファームウェア)、装置内冷却、電波・安全対策にいたるまで自社で開発していますので、お客様ごとに必要なカスタマイズにも可能なかぎり対応させていただいています。」

さらにPFUでは、ハードディスクを二重化するRAIDの組込みコンピュータ向け最適化ソフトウェアも自社開発しているという。これについても話を聞いた。

[橋本]「RAID自体は、業務システムなどでも使われる一般的な技術ですが、組込みコンピュータでは性能要件が一段と高まります。

故障したディスクを交換した場合、正常なディスクからデータをコピーしてリカバリする必要がありますが、このコピー処理の間も、お客様製品による業務が継続できることが求められます。

リカバリのためのコピーにすべての資源を費やしてしまうと、そのハードディスクのデータを使用した処理に支障が出ます。全体の性能に影響しないよう、バランスよく復旧をすすめる機能が望まれます。

このような産業用に特化したRAID機能を、PFUでは自社開発したソフトウェアで実現しています。」

注:「組込みシステムのデータ保全に「ソフトウェアRAID」が最適な理由」(MONOist)
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2011/20/news002.html

オフコン、ミニコンそしてワークステーションやサーバにいたるコンピュータ製品を、自社一貫体制で設計・開発、製造してきたPFU。

産業領域のコンピュータを熟知し、ハードウェア、ソフトウェアともに、長年の開発実績と設計ノウハウをベースにした、対応力と提案力を兼ね備えているメーカー。

これらがPFUが選ばれる理由である。

  • Intel、Intel Atom、Xeonは、アメリカ合衆国および/またはその他の国におけるIntel Corporationまたはその子会社の商標です。
  • UNIXは、米国およびその他の国におけるオープン・グループの登録商標または商標です。
  • その他記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

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