PFU品質のウラの裏を覗いてみた~配送時のあらゆる衝撃に耐えるための過酷な試験~

2019.11.20

ものづくりをしている会社は、例外なく、「お客様に安心してお使いいただける製品」を提供するために、厳しく、ときには気の遠くなるような品質チェックを行っている。
さて、PFUでは、いったいどんな品質チェックが行われているのだろうか?具体的な取り組みを、実際の品質試験の現場に入り込んで、映像とともに、4回に分けて紹介する。

今回はその2回目である。

第1回 PFU品質のウラの裏を覗いてみた~どんな場所でも安心して使ってもらうための地道な検証~
第2回 PFU品質のウラの裏を覗いてみた~配送時のあらゆる衝撃に耐えるための過酷な試験~
第3回 PFU品質のウラの裏を覗いてみた~ほこりにまみれた環境での利用を想定した検証~
第4回 PFU品質のウラの裏を覗いてみた~高温や低温環境での影響を徹底調査~

落下試験の根底にあるもの

PFUが実施している品質試験のうち、今回紹介するのは、製品を配送する際の衝撃に対する耐久性をチェックするもの。「落下試験」と呼んでいる。落下試験は、単に「落として、チェックする」だけではない。そこには担当者のこだわりと熱い想いがあった。

だれにでもある悲しい経験


配達された品物が、フタを開けてみたら壊れていた…。

こういった悲しい経験をした人もいるのではないだろうか。
梱包が不十分だったせいなのか、それとも、配送中に何らかの衝撃を受けたからなのか。理由はともかく、通常であれば、販売元やメーカーに連絡すれば適切な対応をしてもらえる。しかも、返送や再配達に伴う費用を負担してくれる会社も多く、こっちのフトコロが痛むことはない。
そうは言っても、楽しみにしていたモノが予定していた日に使えないとか、壊れたモノを受け取ったときのショックは計り知れない。このことは、購入した商品の金額の大小には関係ないのだ。
こうした、お客様を悲しませる状況は、ゼロにはできないにしろ、できるだけ減らすことがメーカーには求められる。

ひと口に衝撃といってもいろいろ

PFUの製品がお客様の手元に届くまでには、さまざまな配送手段が使われている。トラック、船、ときには飛行機。しかも、お客様の住所が日本国内とは限らない。当然ながら、その経路の過程で、荷物の積み替え作業も発生する。積み替えるのは、人かもしれないしロボットかもしれない。いずれにせよ、いろんな種類の振動や衝撃が製品に加わることは容易に想像できる。
こうした状況を踏まえ、PFUでは、配送時に衝撃を受けた場合でも破損や故障のない製品をお客様にお届けするため、製品を梱包箱に入れた状態で落とす「落下試験」を実施することで耐久性の検証を行っている。当たり前だが、中に入っているのはホンモノの製品だ。さまざまな状況を想定して、あらゆる角度から梱包物を落下させ、耐久性の検証と製品への影響の有無を厳しくチェックしているのである。

配送の過程では、落下に至らないまでも、製品に激しい揺れが加わることだって当然ありうる。このことを想定した「振動試験」も併せて実施しているが、今回は「落下試験」に焦点を当てて紹介する。

これが落下試験機だ

落下試験では専用の装置を使用する。落下試験機だ。落下試験という言葉から、試験の大まかな内容は何となくイメージできると思うが、実際の落下試験機や、現場を見る機会は少ないのではないだろうか?
まずはともかく、落下試験機をご覧いただこう。

高さは2m弱。まるで鉄製の竹馬のようだ。

横に付属した操作パネル盤には、DROP、DOWN、STOPなどと刻印されたカラフルなボタンが配置されている。そして、床にはタタミ1畳分ほどの鉄板が敷かれている。試験の用途によってさまざまな種類の落下試験機があるという。大きく分けると、製品そのものを直接落下させるタイプと、製品をダンボール等で梱包した状態で落下させるタイプがあり、今回、紹介するのは、後者の方だ。こちらは、物流過程での落下衝撃をテストすることが主な目的となる。

“衝撃”をテストする落下試験は“衝撃”だった

さて、いよいよ落下試験が始まる。実際の試験は、おおむね次の手順を踏むことになる。
まず、試験担当者が、対象の梱包物(ダンボール)を、落下試験機に取り付けられた専用のテーブルに載せる。ダンボールは、引っ越し等でも利用される一般的なサイズで、重さは4kgちょっと。テーブルの高さは90cm。これは、平均的な大人の身長の腰の高さを基準にしている。荷物の積み替え中や、手で運搬中に誤って落とすことを想定して設定された高さだという。
次に、操作パネル盤のDROPボタンを押す。すると、テーブルがすっと後方にずれる。その瞬間、梱包物が衝撃音とともに床に落下した。一瞬のできごとであった。

最初、90cmという高さは意外と高くないなぁと思っていたが、やはり床が鉄板だけに、それなりの衝撃を感じる。適切なたとえではないかもしれないが、仮に人間がこの高さから何の準備もなく、90cm下の鉄板に突然落とされたら絶対にケガをするだろうな、などと余計な妄想をしてしまう。

さて、次は、ダンボールのガムテープを外して中身(製品)を確認するのかと思いきや、なぜか、再びダンボールをテーブルに載せ始めた。しかも、よく見ると、今度はダンボールの傾きを微妙に変えている。そして、またDROPボタンを押して、落下。なんと、この作業を、ダンボールのさまざまな面・辺(稜)・角で繰り返すのだ。実は、落下試験に関しては、高さと総重量の組合せがJISで明確に規定されているのだが、PFUでは、規定の高さよりもプラス10cmに設定し、より厳格なチェックを実施しているという。また、落下の傾きについては、「1角3稜6面」という規定があるのだという。これは、角は1か所、辺(稜)は3か所、面は6か所をチェックし、それを1サイクルとするというものだが、PFUでは、2サイクル実施しているとのこと。

ひととおり落下させた後、ようやく、中身のチェックを行うことになる。チェック項目はあらかじめ用意されているリストに従って行うが、損傷の状態はデジタルで計測できるわけではなく、最終的に判定するのは、当然ながら、試験担当者の確かな「目」であり「耳」であり、「感触」である。

PFU品質を証明するもの

落下試験は、基本的に「落下&チェック」だが、実はその比重が「3:7」であるという。つまり、落下後のチェックが重要なのだ。しかし、チェックは経験に裏付けされたものも多いため、「チェックリストだけに頼っていては、不具合を見逃すことがある」のだという。そのため、チェックリストとは別に、試験ノウハウとして品質保証部門内でしっかりと共有する仕組みが用意されている。
今回、落下試験の現場に立ち会うことで、私たちが製品を安心して使えるのは、こうした過酷な(製品にとっても担当者にとっても)品質試験をしている結果なのだと、今さらながら実感することができた。そして、それがPFU品質であることを、落下試験機の鉄板のキズが証明しているようにも思えた。

鉄板がこんなにキズキズ…

もう1つのお届けモノ

落下試験の取材に協力してくれた担当の英(はなぶさ)さんは次のように言う。

「実は以前、配達に関するトラブルを家で経験したことがあります。妻が注文したグラスが、割れた状態で配達され、その時の妻のがっかりした顔を今でも覚えています。」

最終的には新品と交換してもらえたそうだが、このメーカーは輸送中の衝撃に対するチェックをちゃんとしているのか?と感じたという。こういったこともあり、毎回、お客様の気持ちで落下試験に臨んでいるという。
帰り際に英さんが話してくれた次の言葉が印象的だった。

「私たちは、常に、お客様に対して安全に製品をお届けすることを心がけています。そして、お届けするのは製品に加えてもう1つあります。それは、PFUに対する“信頼感”です。」

最後に、今回紹介した一連の落下試験のすごさは、写真だけでは、その衝撃や臨場感が伝わらないと思うので、実際の動画もご覧いただければ幸いである。

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