PFUの光学技術・画像認識技術が実現する“ごみ処理業界の課題解決”と“持続可能な社会への貢献”【2025NEW環境展 出展レポート】

環境ビジネスの最前線を紹介する展示会、「NEW環境展」。
環境汚染問題や地球温暖化問題の解決などの課題に対応する様々な環境技術・サービスを一堂に展示、情報発信する事により環境保全への啓発を行い、国民生活の安定と環境関連産業の発展を目的とする展示会である。
2025年は634社が出展し、5月28日から5月30日までの3日間で来場者数は96,000人を超えた。

PFUは2024年に続き、株式会社リコー、株式会社IHI検査計測、高松機械工業株式会社の3社と共同で出展。「廃棄物分別特化AIエンジン Raptor VISIONシリーズ」を搭載した装置、さらに参考出展として、電池、ミックスメタル、電子基板を対象とした新たなAIエンジンの展示を行った。この記事では、これらの装置やAIエンジンについて動画を交えて紹介する。

展示内容

    株式会社IHI検査計測:リチウムイオン電池検知システム(2025年 製品化予定)
    高松機械工業株式会社:資源ごみAI自動選別機 AI・B-sort
    株式会社PFU:廃棄物分別特化AIエンジン(参考出展)
    株式会社リコー:樹脂判別ハンディセンサー

廃棄物分別特化AIエンジン Raptor VISION」とは…
PFUが世界シェアNo.1(注1)のイメージスキャナー開発で培った光学技術・画像認識技術を応用し、自社で開発した独自アルゴリズムを用いて廃棄物の分別を自動化するAIエンジンである。

注1:ドキュメントスキャナーを対象とする。日本・北米はKEYPOINT INTELLIGENCE社(InfoTrends)により集計(2023年実績)。
ドキュメントスキャナー集計よりMobile/Microを除く6セグメントの合計マーケットシェア(主に8ppm以上のドキュメントスキャナー全体)。欧州はinfoSource社(2023年実績)の集計に基づき、西欧地区(トルコとギリシャを含む)におけるシェア。

リチウムイオン電池検知システム(2025年 製品化予定)

リチウムイオン電池とは、大容量の電力を蓄えることができ、充電して繰り返し使用可能な電池である。スマートフォンやワイヤレスイヤホン、モバイルバッテリーなど、さまざまな製品で広く利用されている。

しかし、リチウムイオン電池が内蔵されていることが外見から判断できない製品も多く、ごみに紛れてしまったり、不適切な方法で廃棄されたりするケースが増加している。こうした不適切な排出が原因で、廃棄物処理施設において発火や火災といった事故が多数発生し、社会的な問題となっている。

PFUの「危険物検知AIエンジン Raptor VISION BATTERY」を搭載した「リチウムイオン電池検知システム」(株式会社IHI検査計測との共同開発)は、ごみに混入したリチウムイオン電池をX線透過撮影と画像認識AIによって検知し、作業者に通知する装置である。

通常、廃棄物処理施設では、収集されたごみを人の目で確認し、手作業で選別する「土間選別」が行われている。この選別において見落としが発生した場合、発火などの事故につながる可能性がある。

「リチウムイオン電池検知システム」では、空港の手荷物検査場と同様に、ライン上を流れるごみをX線で透過撮影し、その画像をPFUの画像認識AIが独自の識別技術で処理することで、リチウムイオン電池を検知する。検知されたリチウムイオン電池の位置はプロジェクションで照射され、その様子がディスプレイに表示される。このプロジェクションとディスプレイの通知により、作業者の除去作業をサポートする仕組みである。

その認識精度は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)が主催するNEDO懸賞金活用型プログラムの「NEDO Challenge, Li-ion Battery 2025」コンテストにおいて第1位を獲得しており(注2)、プラスチックごみに混入している場合は100%、不燃ごみに混入している場合は90%と、高い認識精度を誇るものである。

「NEDO Challenge, Li-ion Battery 2025」コンテスト受賞式典での写真

「NEDO Challenge, Li-ion Battery 2025」コンテスト受賞式典の様子

注2:PFUプレスリリース(https://www.pfu.ricoh.com/news/2025/news250213.html

装置のモニターに表示されるX線透過画像の写真

X線透過画像の例。赤い枠がリチウムイオン電池の位置を示している

装置のディスプレイに表示される映像の写真

ディスプレイに表示される映像の一部

展示されたシステムの様子は、動画で確認いただきたい。

「Raptor VISION BATTERY」および「リチウムイオン電池検知システム」をより詳細に知りたい方は、以下の動画でご確認を。

資源ごみAI自動選別機 AI・B-sort

ビン色別AIエンジン Raptor VISION BOTTLE」は、ベルトコンベア上を流れるビンをカメラで撮影し、茶色ビン、透明ビン、その他ビン、ペットボトルを高精度で識別するAIエンジンである。さらに、ピッキング位置を特定し、その情報をロボットに通知する。
この通知に従って、開発パートナーである高松機械工業株式会社の「資源ごみAI自動選別機 AI・B-sort」のロボットシステムが2本のアームを使い、ビンとペットボトルを自動で選別する仕組みだ。

ビンとペットボトルがベルトコンベア上を流れる様子

AIエンジンがベルトコンベア上を流れるビンとペットボトルを撮影

ビンとペットボトルを識別しているモニターの写真

ビンとペットボトルを高精度で識別し、ピッキング位置を正確に特定

「Raptor VISION BOTTLE」により、廃棄物を処理する中間処理施設において、ビンの色識別の自動化が実現されている。今回の展示では、従来のビンの色識別に加えて、中身が入っているペットボトルの選別機能を追加したAI・B-sortを紹介した。

中身が入っているペットボトルをピッキングする様子

中身が入っているペットボトルをピッキングする様子

AIエンジンが識別したペットボトルとビンをロボットアームが選別する様子は、高松機械工業株式会社の山本玲央さんによる説明動画でご確認を。

「Raptor VISION BOTTLE」は、以下の動画でも確認いただける。

廃棄物分別特化AIエンジン(参考出展)

参考出展では、電池、ミックスメタル、電子基板の選別ラインを想定したAIエンジンを展示。AIエンジンが電池の種類やミックスメタルの中の異物を識別し、その種類と位置をプロジェクションの照射により作業者に通知する実演を行った。

現在、電池リサイクルの現場では、電池を種類別または製品別に、人の手で一つずつ仕分ける作業が行われている。

さまざまな種類の電池が混在している写真

さまざまな種類の電池が混在している例

また、金属スクラップのリサイクルにおいては、金属の色で選別が行われている。しかし、銅と似た色の異物が交ざっている場合、それらも銅と誤認され、同じものと選別されてしまうことがある。

銅とその他の金属が混在している写真

銅とその他の金属が混在しているが、同じ色に見えるものばかり

新たに開発されたAIエンジンでは、電池、ミックスメタル、電子基板といった資源の自動検知が可能となっている。電池種別とミックスメタルを検知・通知する様子は、動画で確認いただきたい。

あらゆる資源ごみの分別を自動化し、持続可能な社会へ貢献

「廃棄物分別特化AIエンジン Raptor VISIONシリーズ」の展示ブースには、リサイクル工場を設計するプラントメーカーをはじめ、廃棄物処理業者や機械メーカー、自治体関係者など、多くの来場者が集まった。プラントメーカーや廃棄物処理業者は、処理施設に導入可能な装置や機器を視察するために訪れ、分別作業に関する課題についてPFUの説明員と意見を交わしていた。また、AIエンジンに興味を持った機械メーカーの中には、「Raptor VISIONシリーズ」とのコラボレーションや機器の共創を提案する企業もあり、今後の展開に期待が高まる。

PFUは、AIエンジンを用いて、ビン選別工程を自動化し、廃棄物処理施設における省人化を支援している。また、AIエンジンを進化させて、施設内での火災事故を未然に防ぎ、作業者が安心して働ける環境づくりにも取り組んでいる。多様な廃棄物の選別をさらに可能にすることで、再資源化のサイクルを加速させていきたいと考えている。PFUは今後も、社外との共創活動を通じて、廃棄物処理業界の課題解決を目指し、持続可能な社会への貢献を続けていく。

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