リコージャパン×PFU による「経理のデジタル化」を通じたSDGsへの貢献とは?

2021.2.2

【左】リコージャパン(株) 執行役員 デジタルビジネス事業本部 事業本部長 本多正樹氏、【右】(株)PFU 執行役員 イメージング事業本部 ビジネス推進担当ビジネス推進統括部長 増田稔

コロナ禍において、多くの企業でテレワークの導入が求められ、経理業務もデジタル化の重要性が増している。その中で先進的なサービスを提供しているのが、SDGs(持続可能な開発目標)に積極的な企業としても知られるリコージャパン株式会社だ。PFUはそのパートナーとしてスキャナーを提供している。

両社によるサービス「RICOH Cloud OCR for 請求書/fi-7160 RICOH Edition」がコロナ禍のビジネス現場でどう活用されているのか。そして2社のパートナーシップが目指すSDGsへの貢献のありかたとは?

両社のキーパーソンであるリコージャパン(株)の執行役員 本多正樹氏とPFUの執行役員 増田稔が、本音で語り合った。

両社の協業により生まれたサービスが「RICOH Cloud OCR for 請求書/fi-7160 RICOH Edition」。様々なサイズ・紙質の帳票やレシートを連続スキャンできるPFUのスキャナーと、読み取った帳票をAIが自動認識、日付や会社名、金額などをデジタルデータとして記録するリコージャパンのクラウドサービスが連携。これまで手作業でやっていた入力業務を大幅に効率化できる。クラウドサービスと小型スキャナーの連携のため、在宅勤務など様々な働き方にも対応する。

リコージャパンとPFUがパートナーシップを組んだ理由は?

[PFU 増田]
はじめまして。私は1991年にPFUに入社して、2020年9月までは開発一筋でイメージスキャナーの開発を担当していました。そして10月からは、企画やグローバルビジネスを担当するビジネス推進統括部も担当することとなり横浜本社に転勤してきました。

エンジニア時代は現場に足を運び、そこでの困りごとをヒアリングして製品開発につなげてきました。昔、ある企業との商談で、一日2万枚のスキャニング処理を求められたことに対し、8千枚しかできず「これはまずい」という状況になり、現場でお客様の声を聴き、開発部門と直にやり取りをしながら1週間で改良を成し遂げたことがありました。結果的に2万枚以上、競合企業を超えるスキャニング処理を実現し、商談を一気にひっくり返すことができました。「現場は本当にエキサイティングで過酷な場所だな!」とつくづく感じました。

[リコージャパン 本多氏]
はじめまして、今日はよろしくお願いいたします。おっしゃる通り、現場に足を運び、現場を見る、現場の声を直接聞くということは、本当に大事だと思います。

私は2018年にリコーに入社して以降、デジタルビジネス事業を担当しています。リコー入社前は、いくつかの会社で事業開発を軸に仕事をしてきました。新卒で入社したIT企業ではSEとして病院向け電子カルテのシステム設計と開発を担当し、お客様先に常駐する毎日。その後は、社会人の留学をサポートする社員40名ほどの小さな事業会社、中堅のアナログ半導体メーカーの企業再生、そしてリコーの直前は音声認識AIのベンチャー企業で海外事業開発に携わってきました。中国をはじめアジア圏の国によく行っていましたね。

[PFU 増田]
さまざまな経験をお持ちなのですね。リコージャパンはデジタルサービスの技術全般に強く、全国の中小企業とビジネスができるチャンネル・販売拠点を保有している点が強みだと思っています。

一方、PFUのスキャナーは、特に紙の搬送性と画像処理によるOCR認識率の高さといったハードウェア・ソフトウェアの技術に強みがあります。こうした両社の強みを生かし、一緒にビジネスを広げられたらと考えています

[リコージャパン 本多氏]
ありがとうございます。リコーグループ、そしてリコージャパンでは、全社を挙げてデジタルサービス会社への変革に取り組んでいます。

そのような変革を成功させるためにも、チームメンバーには「社会・お客様の課題をよく洞察し、その解決に役立つ仕事をしていこう!自分の大切な人に自慢できる仕事をしよう!」と掛け声をかけています。そして、それを実現するために強い思いとこだわりが自然と生まれてくるわけです。PFUのデバイスやスキャニングの技術、そしてセキュリティ面も含めた信頼性は、我々の思いとこだわりを実現するために、是非ご協力・協働いただきたい、文字通り必要不可欠なパートナーシップです。

またハード・ソフトの強みを超えて、何よりもPFUのビジョンに強く共感しています。特に商品づくりでは、「お客様をワクワクさせる夢のあるソリューションを創出します」というお考えがとても素晴らしいですね。さらに、単に最先端のテクノロジーに挑戦するだけではなく、そのテクノロジーのためには「人財を育てる」という、まさに「人」に光を当てていらっしゃる点など、リコージャパンと同じ価値観をお持ちなのだなと思いながら、ご一緒させていただいています。

インタビューを収録した「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo」は、リコーが運営する共創施設。テーマは「はたらくの未来を共に考える知的創造空間」で、新しい働き方の実現と現場のデジタル化について発信している。最近、特に力を入れているのは距離に影響されないコミュニケーションという。なお、収録時は感染防止に配慮し、距離をとった形で対談している。

両社のSDGsへの取り組み状況は?

[PFU 増田]
今回のパートナーシップをきっかけにリコージャパンのSDGsへの取り組みを知りました。かなり早い時期から取り組まれているのですね。トップが率先して、スローガンを掲げ、社員に浸透させているのを見て、これはよほどの覚悟がないとできないと感心させられました。事業とSDGsを同軸で行うという考え方は非常に共感できる部分です。

SDGsの取り組みは「会社のアピールになる」といった側面もありますが、それだけではダメだと思っています。やはり2030年のあるべき姿を考え、そこを目指してイノベーションを起こしていく、技術を開発してお客様に届けることでイノベーションのきっかけを作る、そして社会の持続可能な成長につなげないといけないと捉えています。

PFUでの取り組みは、2019年10月にビジョン「お客様の現場に価値を提供するエッジソリューションパートナーを目指す」を策定し、「共創活動を通じて社会課題の解決を目指す」という社会的価値を提供することを宣言しました。

[PFUのビジョン]

2020年4月にSDGsを推進する専任組織も新設し本格的な取り組みを開始しています。ビジョンの実現に向けたSDGs活動ポリシーとして、「ソリューション:どういった価値を提供していくか」「プロセス:業務をいかに変えていくか」「マインド:意識をいかに高めていくか」の3つの観点を挙げ12の施策を実行中です。これまでも大切にしてきた「イノベーションで価値を届ける」という強い想いを組み込んでいきたいと考えています。

[リコージャパン 本多氏]
リコーグループは創業の精神である「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」という三愛精神を受け継ぎ、今年で創業85年になります。私は、この精神の根底にある考え方はまさにSDGsそのものだと考えています。SDGsが提唱されるずっと前から、会社の遺伝子として同様の考え方が受け継がれているのがリコーグループです。

「三愛精神」はリコーの創業者、市村清氏が1946年に唱えた同社創業の精神。事業・仕事を通じて、自分、家族、顧客、関係者、社会のすべてを豊かにすることを目指した考えで、リコーグループの全社員が、経営や仕事を行ううえで原点となるものという。

リコージャパンではSDGsを経営の中心に据え、社会課題解決に取り組んでいます。「お客様、世の中全般の人たちのためになることは、結果的に永続的に必要とされる」という考え方です。最近は多くの企業が、キーワード・共通言語として「SDGs」を掲げていますが、本質的には以前からあった取り組みであり目標だと思います。ちょっと強い言い方をすると、「SDGsに貢献していない事業や企業は淘汰されていくのではないか」とも思っています。それぐらいSDGsは絶対的・本質的に重要なものですね。

そして、みんなが取り組むことで、「SDGsを意識しなくても当たり前にできているね」というステージに早く到達するといいですし、リコーグループとしてもそうなれるように努力しています。チームメンバー全員が、自分たちの活動の一つ一つがどのSDGs目標につながっているのか理解して取り組み続けて、気がついたら「SDGs」を意識しなくても「社会全般、お客様のためになること、自分の大切な人に自慢できる仕事」をやることが当たり前に実行できている、そんな状況が理想だと捉えています。

[PFU 増田]
お話をお聞きしていますと、感銘というか感動すら覚えます。リコーグループの従業員の皆さんには、このような考え方が浸透しているのでしょうか?

[リコージャパン 本多氏]
広く、強く浸透していると思います。ただ、人間ですから、日々の業務に没頭しすぎて、仕事での「本質的に大切なこと」や「何のためにその仕事をやっているのか」、という認識が疎かになってしまうこともあると思います。ですから私の事業本部では、月に1回、30分ほどの全体ミーティングを実施するときに、「我々が取り組んでいる事業開発やサービス創造はどんなSDGs目標に関係があるのか」を再確認しています。そうした過程を経て、SDGsの取り組みを「当たり前化」することを目指しています。

[PFU 増田]
今、パートナーシップを結びクラウドサービス「RICOH Cloud OCR for 請求書/fi-7160 RICOH Edition」を推進されていますが、これはSDGsのどの部分に位置づけられるとお考えですか?

[リコージャパン 本多氏]
まず、SDGsの「8.働きがいも経済成長も」はど真ん中ですよね。また、PFUとのコラボレーションを通して、テクノロジーで新しいソリューションを作り出し、より良いものにし続けていますので「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」も当てはまりますね。そして1社でやるのではなく、互いの得意なところを組み合わせてコラボレーションで何かを成し遂げるという、今回のPFUとの協業の発想はまさに「17.パートナーシップで目標を達成しよう」にもつながる取り組みだと思います。

さらに「10.人や国の不平等をなくそう」にも大きく貢献できると考えています。コロナ禍でテレワークが推進されてはいますが、現実には出社率100%の企業があるなど、地域間格差や企業規模による働きかたの格差が浮き彫りになっています。我々のパートナーシップで実現している請求書のデジタル化サービスをご利用いただくことで、より多くのお客様が自宅で仕事ができるようになったり、柔軟な働き方を実現していただけるようになれば、まさに格差をなくすことにもつながります。

加えて経理部門という職場で働く人の中には、女性の方々も多くいらっしゃいます。事実、リコージャパンも7割が女性スタッフで子育てをしながら働く方もいます。こうした環境ですから、在宅でも請求の仕事ができるように変わっていくお手伝いをしているという点では「5.ジェンダー平等を実現しよう」にもつながる取り組みだと考えています。

コロナ禍で浮き彫りになった日本のビジネス課題

[PFU 増田]
出社という視点で言うと、コロナ禍でも「判子を押すため」「請求書の処理をするため」といった理由で、出社を余儀なくされている方が多いという課題が浮き彫りになりましたね。

[リコージャパン 本多氏]
おっしゃる通りです。健康・安全・命のリスクを冒しつつも、仕事をまわすために出社しなければいけない人達が大勢いることを改めて感じますね。

リコーグループの中でも同様です。例えば、営業のメンバーはお客様の最新のお困りごとを常に把握して、ソリューションをご提案し、ご提供するために、感染には細心の注意を払いながらも出社する機会が他の職種の社員よりも多いです。一方、企画や開発、バックオフィス業務のメンバーは、できるだけ感染しない・させないよう、どうしても必要な理由がない限りは出社していません。どちらも正しい判断です。

ただ、地域の企業や、中小企業になると出社率が高くなっているように思います。また、大企業でも、店舗や工場などのいわゆる現場は働き続けています。そこには「安心・安全」と「仕事・経済を回すこと」のジレンマが生まれていると思うのですが、そのジレンマの解消こそが、デジタルの力でご支援できることです。

請求書の話で言えば、「RICOH Cloud OCR for 請求書/fi-7160 RICOH Edition」を導入し、自宅にPFUのスキャナーを持ち込めば、在宅勤務していただけます。ご自身やご家族の安全・安心を確保でき、お子さんの学校が休みになっても一緒に過ごせて絆が増したという話も聞きます。「本当にありがとう」という言葉をいただくと、お役に立てて、この仕事をやっていて本当に良かったなと思います。

ポストコロナの日本の働き方はどのように進展し、イノベーションを起こしていくのか

[PFU 増田]
それは嬉しいですね。コロナが収束した後も、在宅で働く、オンラインで対応するというのは当たり前になると思います。

官庁などの公的機関は紙文化が残っていることが多く、PFUの製品もよく導入いただいているのですが、そういうところがキーになっていると感じますね。

あとは地方の動きも一気に加速すると予想しています。実際、欧米ではもう会社に行けない状態がずっと続いていて、否が応でも変えなければいけないという状況ですよね。日本も同じような状況になる可能性がありますから、我々が顧客の働き方を変えていかないといけません。

[リコージャパン 本多氏]
全く同感です。1年前、リコーはオリンピック期間中(当初予定の2020年7月~8月)の2週間、本社オフィスをクローズすると宣言し、リモートで仕事ができる環境を粛々と整えていました。当時はリモートワークというと、社会的には「ちょっと進んだ働き方」という印象でしたし、「ワークライフバランスを実践している」というふうに見られていましたよね。でもコロナ禍になって一変しました。リモートワークは「命・健康と業務・経済活動を両立させるための働き方」になり、当たり前のレベル感が変わりました。

コロナ収束後は、短期的には「やはり対面での仕事はいいね」「オン・オフの切り替えのためにも、オフィス出勤は効果的だね」という声が沢山聞こえてきても不思議ではないです。右に振れた振り子が次は左に振れるような感じで、大きく「リモートから対面」に戻るだろうな、と思います。みんなが街に出て、ワイワイ飲食して、それでプチバブルが起きて……といったような。

でも結局、コロナ禍の前と同じ状態、働き方には戻らない。リモートとリアル、デジタルとアナログ、それらがハイブリッドになって、「これまでとは働き方が変わる」方向でバランスがとれるようになると考えています。

そうなったとき、人は、今まで以上に、様々な場所、お互いに離れた場所で働くことが当たり前になりますし、場所が離れていてもチームで仕事を進めていかなくてはならないので、「つながっている」ことが鍵になります。そして、この「つながる」ための有効な手段がデジタルですよね。

こうした状況に加え、企業がオンプレミス型でカスタマイズされた独自システムを使い続けると、いずれメンテナンスできる人がいなくなり、運用・管理コストが増大するという、いわゆる「2025年の崖」の問題もあります。

つまり、全てのお客様企業にとって、デジタルトランスフォーメーション、もしくは部分的に見るとデジタル化、ワークフローやコミュニケーションをデジタルの力でつなげていくという取り組みは、もはや待ったなしだと思います。しっかりと啓発し、訴求していかなくては、と感じます。

SDGs推進全体におけるデジタル企業の役割

[PFU 増田]
デジタル化が進む一方で、専門家によっては「SDGs全体としては、コロナで後退した」と話す方もいますね。この点はどのようにお考えですか?

[リコージャパン 本多氏]
1年近くコロナ禍を過ごしてきて、SDGsの取り組みが遅れたり、ストップしたりしているといった印象は、全くないですね。日々の仕事の中では、むしろSDGsのゴール達成の意識と取り組みが強く、速くなっていると感じています。

コロナって、本当に憎たらしい、嫌な病気です。しかし、歴史を紐解けば、100年前のスペイン風邪をはじめ、パンデミックは繰り返し起きていますから、今後も同じことが起きると考えておくほうが現実的だと思います。

そう考えると、我々は2つの永続的に大切なこと、「仕事をして経済成長を追求すること」と「命や健康の安全を常に保つこと」の両立を、真剣に考えるべき時期にきていると言えるのではないでしょうか。

「ポストコロナ」のことを本気で考えて、社会全体・お客様にとってどのような働き方を実現することを目指すべきなのか、その実現のために我々はどんな貢献をしていくのか、「大切な人に自慢できる仕事」は何か、という意識で考えないといけないですし、そういうことを深く考える機会を与えられている、地球からそんな問いを投げかけられている、とさえ感じます。

[PFU 増田]
今は経済的なダメージも大きいですが、働き方が大きく変わるというのは、私たち企業にとって大きなチャンスでもあります。改革を加速していきたいですね。自分たちだけではできない部分もたくさんありますから、それを共創しながら実現していきたいですね。

[リコージャパン 本多氏]
共創、是非よろしくお願いします。業種や会社の規模、国や地域によって課題認識が違うので、お客様とお客様にとってのステークホルダーの人たちの課題をしっかりと理解して、SDGs目標も定めていきたいですね。そのような取り組みを積み重ねることで、全体としてみたときにマテリアリティ(重要社会課題)を中心とした17の目標を全て追いかけられると思っています。

実際、うちの事業本部だけでも追いかけている目標が10個ぐらいはあると思います。チームメンバーたちとSDGsに関するブレインストーミングをやると「この事業ってSDGsのXにも当てはまるんじゃない?」みたいな話がどんどん出てきます。例えば、M&Aや資本業務提携を専門にやっているチームなら「17.パートナーシップで目標を達成しよう」に該当しますし、さらには「パートナーとの協業って、そもそも何をやろうとしているの?」と言うと、「そうですね、やろうとしているのはこういう事業なので、SDGs目標Yにつながるね」とか、「新規ビジネスの創出って、雇用の創出にもつながるから、SDGsのZだな」等、考えるとどんどん連鎖していると感じます。

[PFU 増田]
パズルみたいで面白いですね。そういう会話が社内で日常的にあるのですか?

[リコージャパン 本多氏]
はい。お客様にソリューションをご提案させていただく際にも、社会課題やお客様の業務課題に注目して「どのようなSDGsのテーマに絡んでいるか」を意識し、我々の取り組みの目的・思いをご説明するようにしています。

製品やサービスでの提案の際には環境面を含めたご提案を行い、お客様に導入いただいた後、実績に合わせてNPOなどを通じてマングローブの植林を実施し、お客様にご報告しています。「13.気候変動に具体的な対策を」「15.陸の豊かさも守ろう」などに貢献しながら、SDGsの輪を広げています。

このような日々の取り組みがあることで、自然とこうした会話が起き、社内のSDGsへの意識が喚起される状況を生み出しているのだと思います。

[PFU 増田]
お客様という話でいえば、現場には答えというかヒントがたくさんあると感じます。エンジニアの視点で見ると、営業担当者とは別の視点で見ますし、現場ではまだ困りごととして認識されていないことに気付けることもあったりします。それを技術で解決できるのはエンジニアにとっての醍醐味ですね。また、PFUが長年大事にしており、ビジョンにもある「お客様の現場に価値を提供する」という部分にもつながります。

[リコージャパン 本多氏]
現場のお話には、ものすごく同感です。特に、企画・開発メンバーこそ、とにかくお客様のところへ行き、話を聞くのが重要ですし、励行しています。

お客様の課題に対する仮説と解決のための企画案をお話して、それに対するフィードバック、声をお伺いする、ということをしないと、企画自体が独りよがりになるだけでなく、結局のところ、我々自身がお客様にどう役に立てているのか、そもそも何のために仕事をやっているのか、だんだん分からなくなってくるんですよね。

そして自分の趣味の世界で何かプラモデルを作っているような感じになり、社会やお客様の課題、そして最終的にはSDGsからも、かけ離れてしまいます。だから現場というのは、とても大事だと思います。

SDGsの達成に向けて、パートナーシップ戦略は?

[PFU 増田]
現場の声を聞いてSDGsに貢献されているのですね。最後に、SDGsの達成に向けてPFUに期待していることはなんでしょうか?

[リコージャパン 本多氏]
PFUとは、今後もパートナーとして末永くご一緒させていただき、共に成功していきたいと思います。

そのために大切にしていきたいことは、「常に、一緒にお客様の現場を見つづけて、お客様の成功に共にコミットする」ことですし、「変化する環境下でお客様がずっと成功し続けられるよう、あるいはお客様が成功するまで、一緒に走り続け、お客様に寄り添う」ことだと考えています。

PFUにはそういうパートナーでいていただきたいですし、PFUにとって我々がそういうパートナーであり続けられるようにしていきたいと思います。

加えて、「スピード」にもこだわりたいです。お客様が期待するスピード感とマッチしていないと、どんなに良いサービスでもお客様には選んでいただけないですし、選んでいただけないとお客様の成功にも貢献できないので。

自分たちの考えているスピード感は、時として市場の求めるスピードに対して遅いことがあります。例えば、一生懸命になるあまり過剰なサービス機能・品質を追求し、結果として時間がかかり、好機、事業機会を失ってしまうことがあります。だから社内では「お客様視点で、求められている・期待されているスピードを超える速さで」と言っていて、PFUともそういう感覚でやっていければと思います。

また、私は「デジタルはアナログだ」とよく言っています。今後、間違いなくデジタル化は加速していきますが、そもそも「デジタル化」の目的は、価値が大きいにも関わらず、機械では実現できない「アナログな仕事」に人間のエネルギーを割けるようにすることだと思っています。

例えば、リモートワークやオンライン会議で仕事の効率を高めつつ、(命の安全を担保したうえで)会うべきときには会って仕事をする。オンラインで話をするのは便利ですが、リアルに人と会うときほどお互いを理解しきれないこともあると感じています。だから初めて人にお会いするときや、信頼関係を作る段階、重要な話し合いのときなどは、やはりアナログな部分を大事にしたいですね。

デジタルの力を最大限活用して、テキスト・音・画像などの情報、まさに五感を「押さえ」て、お客様のDX実現に貢献していく。と同時に、デジタルの不完全さも謙虚に認めた上で、お客様の成功のために、五感に「寄り添う」アナログな運用も大切にしていく。そんなハイブリッドなお客様のDXの実現、そういうことにこだわりたいです。そしてPFUとはそういうことも含めて、ずっとご一緒させていただければ光栄だと思っています。

[PFU 増田]
ありがとうございます。本当に嬉しいです。今日いろいろお話をお伺いして、考え方にすごく共感しています。特に、今後の話の中で「アナログの存在」を大事にしていく、それをデジタル技術で実現していく、という考え方がすごくいいと思います。

一緒に現場に行って解決するというのもいいですね。なかなかそういう機会は少ないので、まずやってみたら面白いんじゃないかと思いました。それぞれの持っているベースが違うので別の視点からの気付きが生まれるでしょうし、何か新しいものにもつながりそうです。

今は両社が既にもっている製品やサービスを組み合わせて、より良いものを生み出していますが、今後は「組み合わせるだけではない、新しいものが生まれていく……」、そんなことに発展できるといいと思います。

[リコージャパン 本多氏]
「違う視点の両社で共創していく」という意味では、会社同士のパートナーシップもダイバーシティ(多様性)の話になっていきますね。持続可能な開発のための2030アジェンダには「多様性」という表現が繰り返し出てくるなど、重要なキーワードです。

デジタル化により働く場所や環境を選ばず仕事ができるようになると、能力があり、やる気のある人、自律的なマインドを持った人が、もっともっと多くの多様な活躍の舞台、機会を得て、力を発揮し、自己実現できるようになります。そういった意味でも、デジタル化はダイバーシティにも役立ちます。我々がやろうとしていることは同じなのかもしれませんね。

[PFU 増田]
そうですね。今後とも、ぜひよろしくお願いいたします。

※本Webサイト上で使用される商標「リコー」、「RICOH」並びにリコー製品の商品名は「リコー」の商標又は登録商標です。

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