「CES 2020」参加レポート
~最新技術の動向を探り未来につなげる~

最新製品の展示会と会議プログラムを含む、世界最大級のイベント「CES 2020」(以降、「CES」)が、米国ネバダ州ラスベガスで2020年1月7日~10日に開催された。出展企業は4,500社以上。世界中から17万人を超える人が来場した。

ここ数年CESは単なる「家電見本市」から「最新技術の展示会」へと変容している。53回目の開催となった今年も、AI、5G、MaaS(Mobility as a Servic)やXRなどの最新技術が多数展示されていた。各社の「近い未来と遠い未来に向けたビジョン」が出展されるCESは、いまや見逃すことのできない、最新技術の見本市と言っても過言ではない。

このCESに、いま現地で新規事業の創出に挑戦しているPFU社員が参加した。彼らが注目した最新技術の一部を紹介する。

Smart City & Smart Homeが示す未来の生活

AI、5GをベースとしたSmart ○○というカテゴリーが乱立する中、傾向としてSmart Cityに収斂(しゅうれん)しているようだった。Smart Homeは多くの企業が展示しており、8K、TV、AIロボ、クローゼットが多い印象を受けた。

トヨタ:つながるスマートシティ「コネクティッド・シティ」

トヨタはあらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」のプロジェクト概要を発表し、大きな話題となった。静岡県につくられるこの都市では、人々が生活を送るリアルな環境のもと、モビリティ、MaaS、AI技術などを導入・検証できる。展示会場では都市で使われるモビリティの展示も実施されていた。

電気で走行する個人用の自動運転車(e-Palette:人/モノの輸送に加えて移動用店舗としても使用できる)

BPZ Labs

スイートポテトならぬスマートポテト?機器をポテトに差し込み、ポテトに話しかけるとポテトが返事をする。皆ポテト大好きだろ?な感じで製品説明はノリノリだった(笑)

Moen

展示ブースに並んでいるのは「蛇口」。「なぜここに蛇口…?」と思ったら、音声で、水量と温度を一定段階ごとに操作できるという「スマート蛇口」だった。バッテリーは蛇口に内蔵されているらしい。Smart Homeのカテゴリーでの展示物は多々あったが、Smart蛇口とは…なかなか尖っている。

Anvy Technologies Inc.

Smartゴミ箱現る!?かと思いきや、これは生ゴミ廃棄をきれいに無臭で処理する製品「Sepura」。廃棄されたゴミは堆肥にするか、通常どおり捨てるのだそう。米国では、小さめの生ゴミはシンクに流し、シンクに内蔵されているコンパクターという粉砕機で砕いて、水と一緒に流してしまうのが一般的だ。これが、悪臭や不衛生につながっているという問題提起でもある。

Haier

スマートクローゼットとスマートミラー。スマートミラーは、試着しなくても、鏡に映った自分に服を合わせて試すことができる、ちょっとだけ未来の自分をプレビューできる鏡。衣類の消臭が可能なクローゼットは、Haier社だけではなく、中国や韓国の家電メーカーからも出展されていた。

XR (VR/AR/MR)の実用的な新サービス

ARグラスが多く出てきた印象。いまのところ主流はまだゲーム/エンターテインメントのように感じていたが、陸上用サングラス、水泳ゴーグルといったSports-Tech(スポーツテック)方向に実用化が進んでいるようだ

Vuzix

血中酸素濃度を数値化して水泳競技者のペース管理に活用するという「Smart Swim」。

Aetrex

足の形を3Dスキャンし、その人に合わせてインソールを3Dプリントするサービス。矯正用ソールなどを医療用で作ると現状は高額なので、安く作れるようになるとうれしい。

ANTVR’s

高解像度のARグラス。試作品レベルでの展示だが、性能は高いと感じた。

SNIFFY

嗅覚のAR。香りを合成し体感できる装置のデモは、ワインのアロマ要素から香りを合成し、事前に体感することで、合わせる料理のレシピを検討するというもの。

EyeQue

スマホで視力検査ができるツール。度付きのARグラスのようなウエアラブルデバイスが普及していくと、メガネをWebで注文できるようになることも考えられ、発展性を感じる。

モビリティとMaaS系の革新的なサービス

初期のCESは「家電見本市」だったが、今回は展示の半分くらいが「モビリティ」と「MaaS系」だった。自動車メーカーがその方向性をSmart Cityに向けている中で、自動車以外のメーカーからも自動運転に絡めた展示が多かった。ソニー等が印象的で、「Hyundai × Uber」のFlying Taxiも話題になっていた。

ソニー

モビリティにおける安心・安全、快適さやエンターテインメントなどを追求するモビリティの取り組み「VISION-S(ビジョン エス)」を具現化した試作車を展示し話題になったソニー。

電気自動車で、車内外に33個のセンサーを付け、多方面の安全性をうたっていた。残念ながら試乗はできなかったため詳細は不明だが、インターネットへの接続や、車内で映画等のコンテンツを鑑賞できるなど、ソニーの音響技術を活かしてエンタメ面も充実している。

BlackBerry

自動車メーカーが集まるエリアにBlackBerryのロゴを見つけ、ビックリして寄ってみた。自動車を作っているわけではなく、関連するソフトウェアをLenovoと共同開発してソリューション提供しているとのこと。特に自動車データプラットホームは、CES 2020 Innovation Awardを受賞し、スマホの先駆者としてのBlackBerryからの進化を感じた。

TOTO

「Toilet as a Service」。米スタートアップ企業のグッド・トゥー・ゴーと協業したこのサービスのコンセプトは「移動式公衆トイレ」。タンク車や清掃員が各トイレを回るのではなく、トイレが自走式でステーションに帰ってきてメンテナンスを受けるらしい。トイレは必要な時に近くにあって欲しいものであり、サービスとしての納得性は高いと感じた。

三菱電機

将来のMaaS社会に向けた新しいモビリティのコンセプトを提案していた三菱電機。その中でも、車内外との快適なコミュニケーションを実現する最新の HMI(Human Machine Interface) 技術を用いた話者識別+発話抽出エンジンが、特に気になった。事前学習なしで複数人の同時発話を話者別に抽出する。ノイズリダクションも行うため、個々の発話者の声を明瞭に聞くことができる。現状はフロント4マイク構成で左右2者の識別だが、今後拡張していく予定とのこと。

未来に向けた変革ビジョンを打ち立てる

コンシューマー市場のトレンド調査としては、CESにさえ参加すれば十分と言われている意味を実感した。
それくらい最新の技術がここには集まっていた。もともとの自分の土俵の外に向かった展示の大企業が目立っており、近い未来と遠い未来に向けたビジョンを展示でうまく見せていた。
大きな変革ビジョンを打ち立て、業界の外へポジションを拡大していく企業を目の当たりにし、PFUの変革に向けて大きな刺激となった。


最後にうれしいトピックス。
HHKB(Happy Hacking Keyboard)が、“Best of CES 2020 awards”(CESの開催に合わせて世界最大級のテクノロジーWEBマガジンHow-To Geekが独自の目線で選出)で、「ベスト・コンピューターアクセサリー」を受賞した。

Best of CES 2020: All the Best Things We Saw This Year
https://www.howtogeek.com/487071/best-of-ces-2020-all-the-best-things-we-saw-this-year/

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